東洋医学を知るにあたり、基本中の基本となる
『陰陽』。
当たり前すぎて、なんの疑問もなく習いますが
一体どういうことなんだろう?と考えたことはありませんでした。
私は、不思議な魅力のある、この、まが玉が合わさったような陰陽太極図に
とても惹かれました。
(私のロゴも、陰陽太極図と月と弓をモチーフにしています。)

丸の中に、2色がうまく丸くおさまっている。
陰の中に陽があり、陽の中にも陰がある。
どちらかが満ちれば、どちらかに変化する
様子を一つの丸の中に表した、
味わい深いシンボルです。
そんな陰陽について、改めて考えてみます。
陰陽って?
陰陽を扱う術師
『陰陽師(おんみょうじ)』が、
”妖怪を祓う呪術師” のようなイメージも
あるので、陰陽と聞くと
占いや呪術?と思う方もいるかもしれません。
ちなみに、陰陽師はその昔、
平安時代・律令制下の国家公務員でした。
朝廷には「陰陽寮(おんみょうりょう)」という役所があり、
暦(こよみ)の作成 、天文観測 、占い・吉凶判断 、時刻の管理 、祓い・祈祷
などを行うれっきとした職業だったようです。
すべてのものは、対照的な二つの組み合わせで成り立っている。
上があるから下がある。表裏がある。
光があれば、影がある。
「この世界にあるものは、すべてふたつの側面を持っている」
という気づきから始まっています。
陰陽とは? もともとは「山の影と光」
「陰陽」の「陰(いん)」という字をよく見ると、
山の陰=日の当たらない側を意味します。
「陽(よう)」は逆に、日の当たる側。
『説文解字』(中国最古の漢字字書)には「陰:闇也」「陽:高明也」と記されています。
古代中国の人たちは、普段目にする山の面に、
「光の当たる側と、影になる側」があることに気づき、
やがてそれが自然界や人間界のあらゆるものに共通することを観察していったのです。
「陰陽なるものは天地の道なり、万物の網紀、変化の父母、生殺の本始、神明の府なり」
「陰陽とは、天地が運行していくための根本的な法則である。万物を生み出す源(父母)である。あらゆる変化を引き起こす根源であり、生命が生まれ、また尽きていく(生と死)の、そのもっとも根本的な出発点である。」
2200年以上前に書かれた黄帝内経には、
陰陽とは自然界全ての根本的な法則で
全ての源であり生命の出発点、だと説かれています。
…なんだか壮大すぎて?ハテナ?
という方もいると思います。
どういうことなのか、具体的に見ていきます。
陰と陽、それぞれの性質
ざっくりまとめると、こんなイメージです。
陰 ☽
- 暗い・内側
- 重い・沈む
- 静か・冷たい
- 夜・冬・水
- ゆっくり・休む
- 形あるもの
陽 ☀
- 明るい・外側
- 軽い・上がる
- 動く・熱い
- 昼・夏・火
- すばやく・活動
- エネルギー
最近だと、明るい性格だと陽キャ、
暗くて地味だと陰キャなど言ったりするので、
陽が良くて、陰は良くない、
と思う人もいるかもしれませんが、
違います。
陰も陽も
どちらも必要で、どちらかだけでは成り立たない。
二つのバランスが整っていることが大切です。
日常にある「陰陽」
日常にある陰陽を考えてみます。
🌖☀️
昼と夜。太陽と月。
昼(陽)と夜(陰)は毎日入れ替わります。
昼がなければ、人も植物も健やかに育たないし、
夜がなければ、多くの生き物は眠れません。
月と太陽、についてはまた追って記事にしていこうかと思っています。
🧑🤝🧑
男性と女性
凹凸(おうとつ)の凹は陰、凸は陽とされるように
一般的に男性は陽、女性は陰とされます。
でも、どちらの体にも陰と陽の両方が宿っています。
女性ホルモンも男性ホルモンも、量の差はあれど
どちらのホルモンも男性にも女性にもあるのと同じ。
👨👧
親(陰)と子(陽)
小さな子は、陽気のかたまりとも言われます。
無邪気だった子供が成長し、
大人になっていく過程で、陰の要素を持っていきます。
幼い頃は陽いっぱいで、愛情も感情もパワー全開で
親にまとわりついていた子が、
お年頃になると口数が減ったり、親を遠ざけたりする。
外に開いていたエネルギーが、自己の内側に向かい始めるのが
思春期です。
小さな頃の子供の動画を見て
「可愛かったなあ😭」と思いますよね(遠い目)。
親としては戸惑うけれど、
自然の摂理としてはとても健全な変化なんです。
(個人的な熱が入り長くなってしまいました)
🫁
息を吸う・吐く
吸気(陽)と呼気(陰)。
どちらかしかできなければ生きられない。
呼吸が止まると生きられないし、
吸うだけ・吐くだけ・どちらかしかできなくても生きられません。
🏃♀️
運動と休息
動くと、エネルギーは巡り発散し、
休むと、エネルギーは蓄えられる。
動く(陽)だけでは消耗する。
休む(陰)だけでは滞る。
🌸🍂
春夏と秋冬
春・夏は陽の季節(育ち、広がる)。
秋・冬は陰の季節(実り、内に入る)。
冬に疲れやすいのは、単に寒いからだけではなく、
自然の流れで陰が深まる時期だからとも言われています。
陰と陽の関係
陰陽はただただ物事を二つに「分類」しているだけではなく、
関係性とうごきを表しています。
陰陽の大切なルールを知ると、理解が深まるかもしれません。
(国家試験にもよく出る所です)
① 陰陽互根 (相手がいなければ自分もいない)
上が無ければ下がない、下が無ければ上もない。
おもてだけの紙が無いように
(どんなに頑張っても紙の裏面を取り除くことはできません)
相手がいなければ自分もいない、
と言う関係を、陰陽互根、と言います。
② 陰陽対立(反対の性質としてせめぎ合い、互いを抑制し合う)
陰と陽は正反対の性質を持ち、互いにせめぎ合う関係にあります。
暑ければ涼をとりたくなり、
疲れれば休みたくなる。
このように、片方が強まればもう片方がそれを打ち消そうと働く関係を、
陰陽対立と言います。
③ 陰陽制約 (どちらかが過度に強くなりすぎないよう互いに制約し合っている)
陰陽の平衡(バランス)を取るために、対立しながらも、
お互いを制約している。
陰と陽、お互いが相手の暴走を抑えバランスを取り合うことを、
陰陽制約と言います。
④陰陽消長 (増えたり減ったり、変化しながらバランスを取る)
陰陽は固定されたものではなく、常に変化しています。
昼が長くなれば夜は短くなり、冬が終われば春が来る。
常に50:50のバランスではなく、
20:80の時もあれば、60:40の時もある。
陰陽の量が減ったり増えたりして、長い目で見たときにバランスが取れている。
これを陰陽消長と言います。
⑤陰陽転化 (やがて逆になる)
極まると、反対に変わる。これは「物極まれば必ず反する」という考え方。
夏の盛り(陽の極)を過ぎると秋(陰)へ向かうように、
陽の盛りを極めると、陰に変化していき、
陰を極めると、陽に変化していきます、
これを陰陽転化と言います。
⑥ 陰陽可分 (二つに分けられる、ということ)
陰陽に分けられることそのものを陰陽可分、と言います。
ただ単に2つに分けるだけではなく、
2つに分けたあとも、条件や状況により
さらに細分化していくことができます。
陰陽の分け方は、あくまでも相対的なもの。
陰陽の具体例を挙げましたが、
注意したいのは、陰陽可分でも触れましたが
これは陰!これは陽!と決まっているものではないということ。
例えば、水とお湯であれば、水は陰・お湯は陽、ですね。
でも、お湯の中でも
40度のお湯は80度のお湯と比べたらぬるいので陰、ともいえます。
食べ物の例で言うと、例えば鶏肉とイカを比べると、
体を温める働きのある鶏肉は陽、
熱をさまして潤す働きのあるイカは陰、
と考えられます。
でも、鶏肉にはメス・オスがあるし、
部位によっても変わってきます。
イカも、生で食べるのと、火を通して食べるの都では
体への作用が少し変わります。
陰陽は、その時、何と比べるかによって都度変化する
あいまいな概念とも言えます。
陰陽バランスを整える=体を整える
鍼灸施術では、体の陰陽バランスを整えることが、治療の大原則です。
陽が亢進していればそれを鎮め、陰が虚していたら滋陰する。
逆もまたしかりです。
私が行う鍼灸施術では、自律神経を整えることに重きを置いていますが、
自律神経も、陰陽のバランスで成り立っています。
交感神経(陽)と副交感神経(陰)。
両方がしっかり機能してこそ、充実した体で元気に過ごせます。
交感神経は緊張・活動・戦闘・外側に向かうモード。
副交感神経はリラックス・回復・休息・内側に戻るモード。
どちらかが強すぎても、弱すぎても、体の健やかさは崩れていってしまいます。
陰陽の発祥は自然界の話だったけれど、
今日の私たちの体の話でもあります。
古代中国の人たちが自然を観察して見つけた
「陰(かげ)と陽(ひ)のバランス」と、
現代医学で研究された「神経のバランス」。
全然違うジャンルだけれど、気づいた先が似ていたというのも
面白いなと思います。
陰陽を知ると、
自分の体や心を、良い・悪いで判断するのではなく、
今はどんな状態なんだろう?
調子が悪いとしたら何のバランスが取れていないんだろう?
と、一呼吸おいて眺められるようになる気がします。
東洋医学は、病気だけを診る学問ではなく、
人も自然の一部としてとらえ、
その人が本来持つバランスを取り戻すための知恵でもある。
陰陽はその入り口。
この考え方は、『五行』や『虚実』『寒熱』などの東洋医学を理解する上で欠かせない
さまざまな視点へとつながっていきます。
次回は、その中でも自然と人のつながりを五つの要素で読み解く
五行について一緒に見ていきたいと思います。

